気のせいじゃなかった
大学生最後の夏に友達数人とデると噂の旅館に泊まる事になった。
ただの旅行じゃつまらないからって事だけどコレは…⁉︎と思っていたのは私だけだったのかあっという間に当日に。
旅館の女将さんは齢80はゆうに超えていそうな御高齢の方でチェックインの際も何度も必要事項を言わなければいけなくて、どっと疲れてしまった。
気になるのはそれだけで、お風呂もほぼ貸し切りだし静かだし学生最後の旅行を満喫してた。
修学旅行の夜の様に恋バナに花を咲かせる、なんて事もなく酒と疲れでグデグデになった私達は一人、また一人と寝落ちしていき、気付けば私だけが起きてる状態に。
(みんな寝落ちかーい…笑)
となんとも言えない心地良さを感じつつ私も寝ようと、その前にトイレに行くと誰かトイレに入ってた。
ガコン!と大きな音を立てて開けようとしてしまった事に申し訳なさを感じつつ疑問がふと思い浮かんだ。
(あれ?みんな寝落ちしてなかったっけ?)
とボヤける思考で考え耽っているとトイレの引き戸がススス…とゆっくりと開いたので、反射的に見てしまった。
目の前には誰もいなかった。
足元に、あり得ない角度の顔だけが居た。
言うなれば逆貞子のような目線で私の方を恨み込もる目で睨み付けていた。
次の日の朝、布団の中で目が覚めて、いつも通りの朝、みんな笑顔で元気で何もかもいつも通り。
(みんないつも通りだ…悪酔い故の夢か?)
と思い、こんな良い雰囲気、ぶち壊すのもなと思い、昨夜の事は黙ってた。
期待して損したねーって話しながら旅館を後にする際に、稼働してるからどうかわからない黒電話と壁の間に寄せ書き台帳を発見したので折角だから書いて行こー!とパラパラページをめくると「この旅館噂通りデます」「〇〇号室が特にヤバイ」「這いずる女」等の書き込みがワラワラと…。
〇〇号室は言わずもがな私達が泊まった部屋だった。

